【簡易な事件で罪を認めている例】
72時間以内
勾留を争い、示談に向けて原則10日間
+延長10日間以内
起訴後30日~60日
程度で公判
1週~3週
公判ではノウハウを駆使してあなたが弁護士をつけたいと考えた場合、国選弁護制度と私選弁護制度という2つの方法があります。
国選弁護制度を利用せず、自分で弁護士を選び、その弁護士にお金を支払って依頼する制度を私選弁護制度といいます。
一般的に言えば、私選弁護制度は、国選弁護制度と比べると、お金をかける分、最良の弁護を受けることのできる可能性が高くなるような気もします。
しかし、私選弁護で依頼したからといって、必ずしも最良の弁護を受けることができるとは限りません。注意も必要です。
依頼する弁護士が「刑事弁護に精通した弁護士」でないと意味がありません。
知人などから弁護士を紹介してもらえる場合ですと、ある程度、「その弁護士が刑事弁護に熱心に取り組んでいるのか?」などの情報を教えてもらえることが多いと思います。ですので、知人の紹介で、弁護士に依頼するのであれば、ある程度は安心だと思います。加えて言えば、一般の方に紹介してもらうのではなく「弁護士に」「刑事弁護に精通した弁護士」を紹介してもらえるならば、かなりの確からしさで「刑事弁護に精通した弁護士」に依頼できると思います。
他方で、弁護士を紹介してもらえる伝手がない場合、①弁護士会に弁護士の紹介を求める方法、または、②インターネット(ホームページやポータルサイト)で弁護士を探す方法くらいしかありません。
まず、①弁護士会に私選弁護人の紹介を求めた場合、国選弁護制度と同様に、ランダムで紹介されるため、紹介された弁護士が刑事弁護に精通しているという保証がありません。正直な感想を言えば、国選弁護制度とあまりかわりがないように思います。
次に、②インターネットで弁護士を探す場合、たとえば、検索エンジンで「(地域)、刑事事件」と検索し、その検索結果に上位で出てくる法律事務所は、多額の広告費用をかけているがゆえに検索の上位に出てくるのであって、そのような法律事務所とその事務所に所属する弁護士の刑事弁護の能力には相関性がないことが多いと思います(もちろん、中には、刑事弁護に精通している弁護士もいるとは思います。)。また、広告を大展開している法律事務所の弁護費用は、比較的に高額であることが多く、割高感は否めません。
以上のように、弁護士会から紹介を受ける方法やインターネットで探す方法では、「刑事弁護に精通した弁護士」に依頼できる保証がないのです。
「では、どうすれば良いのか?」というご質問に対して、確実な答えを導き出すことはなかなか難しい話ですが、仮に、私が弁護士になっていなかったとして、万が一逮捕されたならば、以下のような要素を考慮して、弁護人を選ぶと思います。
逮捕されると、警察署の留置場にとどめ置かれ、午前・午後と長時間に渡って、取調室で取調を受けることになります。
そして、多くの事件では、その後、勾留されることになります。
逮捕から勾留までに要する時間は、刑事訴訟法では、72時間以内と定められていますが、実務の運用上は、おおざっぱに言えば、
①午前に逮捕された場合、警察署で取調べを受けた後、午後かその翌日に、勾留請求のために、検察庁と裁判所に送られて、勾留決定を受けることになる。
②午後に逮捕されると、その日は警察署などで取調べを受け、留置場で夜を過ごし、翌日または翌々日に検察庁や裁判所に送られて、勾留決定を受けることになる。
という事例が比較的多いような気がします。
逮捕されてから勾留されるまでの間、原則として、弁護士以外は、被疑者との面会ができません。
逮捕された人がとどめ置かれる場所は、基本的には、犯罪が起きた場所を管轄する警察署の留置場ですが、留置場の空きの関係や共犯者がいるなどの事情で、別の警察署の留置場にとどめ置かれることもよくあります。裁判所が勾留を認めた場合、原則は10日間、延長すれば、最長10日間の合計20日間、警察署の留置場で生活しなければなりません。そのように勾留されることを回避するためには、勾留請求の段階(勾留が決定される前)で、裁判所に、意見書を提出し、勾留決定がされることを阻止しなければなりません。
そして、裁判所に「この被疑者を勾留すべきではない」と思わせ、勾留請求を却下させるような「説得的な意見書」を作成するには、専門的なスキルやノウハウが必要です。ですから、そのような意見書を提出する場合には、弁護士に依頼して、意見書を提出してもらう必要があります。
通常、弁護人から裁判所に提出する意見書は、作成に数時間を要しますし、また、同居のご家族などに事務所にお越し頂き、身元引受書や上申書の作成をして頂かなくてはなりません。また、被害者がいる事件の場合、被害者と示談を締結できれば、早期釈放の可能性がより高まります。 そのように、勾留を争うための準備にそれなりの時間を要しますので、逮捕後すぐに弁護士にご相談をいただく必要があります。勾留された場合、一般の方は、平日の午前または午後に20分程度、勾留されている人との面会ができます(弁護士はそのような制約を受けませんので、いつでも、何時間でも面会できます。)。面会を考えられている方は、事前にその警察署に電話をかけて、留置管理課につないでもらい、面会の意向やその時刻を伝えておいた方が無難です(予約制をとっている警察署もあります。)。
ただ、勾留決定とともに、弁護士以外との面会を禁じる旨の接見禁止決定がされることがあり、その場合には、一般の方は面会することができません。
逮捕後に勾留決定がされた場合、裁判所に不服申立をすることができます。その不服申立を、「準抗告」といいます。
準抗告も、先ほどご説明した「勾留決定がされないようにするための意見書」と似たような内容のものです。
ただ、当初の勾留の判断は、地裁の若手の裁判官や簡裁の裁判官が行いますが、準抗告の場合、裁判官3名で構成される合議体(たとえば、テレビで法廷がうつされる際に、檀上の3人の裁判官がうつることがありますが、その3人の裁判官で合議体が構成されています。)によって判断されます。
これは、私の個人的な体感ですが、勾留決定後に準抗告で争うよりも、勾留決定前に意見書を提出して争った方が弁護人の意見が認められやすいような気がします。10日間~20日間の勾留がされた後、検察官が処分を決めます。
処分は、大きく分けて、3つあります。
①起 訴 検察官がその事件について裁判所に起訴すると、裁判所で正式に裁判を受けることになります。
②略式起訴 検察官がその事件について裁判所に略式起訴すると、10万円~100万円程度の罰金(犯罪によっては、より高額なものもあります。)を納付することを前提に、釈放されます。
略式起訴は、法令で罰金刑が認められている犯罪でしか選択できません。
また、略式起訴をする場合には、被疑者が犯罪事実を認めていて、略式起訴で事件を終了させることに同意する必要があります。
また、基本的に、罰金の分割払は認めてもらえません。ただし、(風の噂で)しばらくの期間につき罰金納付を猶予された例や分割払が認められた例を聞いたことはありますが、確認をとっていないのでわかりません。原則として、判決を受けるまでは、警察署の留置場に留め置かれることになります(判決を受けるまでの間、ずっと、警察署の留置場で生活するのではなく、起訴から数週間後に、拘置所に移送されることが多いです)。
起訴された事件が簡単な事件1件で、かつ、被告人が罪となる事実を認めている場合には、裁判は、おおむね2回で終わります。1回目の期日に審理を行い、2回目の期日は判決日です。
起訴後1ヶ月~1ヶ月半程度で1回目の裁判が行われ、そこから1週間~3週間程度で判決期日が開かれます。被疑者が起訴されたとしても、他にも別の事件(犯罪)があれば、改めて、その別の事件で再逮捕・再勾留されます。
そうすると、起訴された裁判は進みながら、並行して、警察署に勾留されて、10日間~20日間、前の事件と同様に取調を受けます。そして、再勾留の満期日に、追起訴されます(場合によっては、不起訴となることもあります。)。
注意すべきことは、再逮捕・再勾留がされると、1つ目の事件と2つ目の事件で二重に勾留されることになりますので、1つ目の事件について保釈が許可されたとしても、釈放されません。ですので、そのような場合には、保釈請求をする前に、あらかじめ検察官と協議を行い、再逮捕・再勾留しないように意見を申し述べることが重要です。起訴後の勾留については、保釈制度が用意されています。
保釈制度というのは、裁判所が被告人について「証拠隠滅の恐れはないかどうか」、「逃亡のおそれはないかどうか」などの事情を検討し、そのような恐れがない(または、それを踏まえても、釈放の必要性がある)と判断されれば、被告人が一定の保証金を裁判所に預けることを条件に、釈放されるという制度です。
裁判所に預ける保釈保証金の金額は、事案によりますが、概ね150万円~350万円程度です(ただし、例外的に、高額の保釈保証金を求められる事案もありますし、追起訴が重なる事件は400万円程度になることもあります。)。裁判所に預けた保釈保証金は、被告人が釈放されている間に証拠隠滅や逃亡をしなければ、判決後に返還されます。
起訴されると、2週間~3週間程度で、「検察官が裁判に証拠として提出する予定の記録」を開示し、また、必要があれば、弁護人から検察官に要請することで、「裁判に証拠として提出する予定の記録以外の、捜査の過程で作成された記録」も開示されます。
弁護人は、それらの開示された記録をコピーし、被告人の言い分を踏まえつつ、入念に記録を精査します。そして、記録を精査した後、被告人と協議を行って、弁護方針を決めます。罪となる事実を争う事件では、被告人に記録を差し入れ、留置場内で検討してもらうこともあります(後に記録は返却してもらいます。)。
また、裁判期日が近くなると、裁判期日に被告人に対して行われる被告人質問の練習などをします。
被告人は、起訴後は、そのような準備以外に、取り立てて行わなければならないことはなく、留置場や拘置所で生活することになります。ただし、再逮捕・再勾留が行われる場合には、初回の起訴後も引き続き取調を受けることになります。示談というのは、「犯罪の被害者等との間で、民事関係について金銭のやり取りを行い、合意すること」です。
例えば、飲食店で客の田中さんと鈴木さんが口論となり、田中さんが鈴木さんを殴って怪我を負わせてしまったという架空の事件で考えてみます。田中さんは、傷害罪で逮捕され、鈴木さんが被害者となります。
田中さんが勾留された場合、起訴、略式起訴、不起訴のいずれかの処分はされますが、それは刑事関係(刑法関連)の処分であって、民事関係の処分ではありません。
民事関係では、田中さんは鈴木さんに怪我を負わせてしまったのですから、鈴木さんは、田中さんに対して、不法行為(民法709条)に基づき、損害賠償請求を行うことができます。
そのような損害賠償をできる関係(民事関係)について、田中さんが鈴木さんに賠償を行うなどして、賠償金のやり取りを終え、合意をすることを「示談」と言います。場合によっては、分割払いの合意をすることや、とりあえずは一部の損害についてのみ賠償の合意をすることもあります。
示談を締結できれば、刑事処分を検討する上で被疑者・被告人に有利な事情になります。
ただし、単に示談を締結したことだけではなく、損害賠償全額の支払いを現に行っているのかどうか、や、被害者が被疑者や被告人を許し、刑事処分を望まないと表明しているかどうかが、より重要になります。
そのような示談を締結した場合、被疑者や被告人にとって、刑事処分上(特に窃盗や横領などの財産犯の場合には)相当に有利な事情となりますので、検察官がそのような事情を踏まえ、例外的に、勾留期間の途中で釈放することもあります。